補聴器と集音器の違いとは?
補聴器と集音器はどちらも聴力をサポートするための機器ですが、両者には大きな違いがあることをご存知でしょうか。ご自身に合った聞こえを実現するためにも、補聴器と集音器の主な違いを押さえておくことが重要です。
今回は、補聴器と集音器を装用する目的・販売方法・価格帯・アフターケアの違いについてわかりやすく解説します。補聴器と集音器のどちらを選ぶか検討する際のポイントとあわせて見ていきましょう。
「補聴器」「集音器」とは?
そもそも「補聴器」「集音器」とは、それぞれどのような機器なのでしょうか。補聴器と集音器の基本的な特徴について解説します。
補聴器とは
補聴器とは聞こえの課題を解決するための医療機器であり、厚生労働省から認定を受けている点が大きな特徴です。聞こえには一人ひとりさまざまな特徴があり、その人の生活環境や聞こえにくさを感じる状況によって必要なサポートは異なります。そのため、補聴器は一人ひとりの聞こえに合わせて音を精細に調整できるようにつくられているのです。
たとえば、人が小声で話す声が聞き取りにくいからといって、すべての音を増幅させてしまうと衝撃音などの騒音も増幅されてしまいます。補聴器には音を一定以上の音量に増幅させない機能が備わっているため、騒音などによって耳を痛めないよう調整が可能です。
集音器とは
集音器とは、周囲の音を一律に増幅させる音響機器のことをいいます。補聴器のように一人ひとりの聞こえに合わせて微調整するための機能はなく、音の増幅レベルの高低を調整できる程度です。
人の聴覚は、必要な音声を無意識のうちに聞き分けています。雑踏など騒がしい場所でも、会話をしている相手の声が聞き取れるのはこのためです。一方、集音器は会話の声だけでなく周囲の騒音も一律に増幅することから、騒音に埋もれて会話が聞き取れない・耳が痛くなってしまうといったこともあり得ます。
補聴器と集音器の主な違い
補聴器と集音器には、装用する目的・販売方法・価格帯・アフターケアにおいても大きな違いがあります。両者の違いを4つの観点から見ていきましょう。
目的の違い
補聴器は医療機器のため、基本的に耳鼻咽喉科の医師によって装用をすすめられます。聞こえにくいと感じたらすぐに補聴器を購入するというよりは、医師の診断を受けた結果、補聴器の装用を解決策として提案されるのが一般的です。
一方、集音器はやや聞こえにくいと感じている方が、聞こえを少々改善するために装用する音響機器です。音の種類によって増幅幅を変化させる機能はほとんど備わっていないため、聞こえの状態によっては集音器では対応できないケースもあります。
販売方法の違い
集音器は音響機器のため、一般的な家電量販店などで購入できます。微細な調整に対応する機能は備わっていないことから、販売時にも一人ひとりの聞こえに合わせた調整は行われません。
これに対して、補聴器は、補聴器専門店や補聴器の取り扱いのあるメガネ店などで購入する必要があります。購入時には専門家によるカウンセリングや聴力測定が実施され、一人ひとりの聞こえに合った補聴器の選定や、補聴器の微細な調整が行われる点が大きな特徴です。
価格帯の違い
補聴器と集音器では価格帯も異なります。それぞれの製品・価格例は次の通りです。
補聴器
製品名(メーカー) | 形状 | 価格 |
---|---|---|
バート パラダイス(フォナック) | 耳あな型 | 片耳212,000円〜 両耳424,000円〜 |
リンクス クアトロ5(リサウンド) | 耳かけ型 | 片耳230,000円〜 両耳460,000円〜 |
TH-33DP(コルチトーン) | ポケット型 | 59,000円 |
集音器
製品名(メーカー) | 形状 | 価格 |
---|---|---|
効聴 KR-77(アネックス) | イヤホン型 | 5,500円〜 |
a25207(ファミリーライフ) | 耳かけ型 | 7,670円〜 |
SMR-10(ソニー) | 首かけ型 | 32,210円〜 |
集音器は数千円〜数万円で購入できるのに対して、補聴器は20万円以上のものも見られます。前述の通り補聴器は医療機器であり、微細な音の調整が可能な機能を備えていることから、こうした価格差が生じているのです。
アフターケアの違い
補聴器と集音器では、購入後のアフターケアにも大きな違いがあります。補聴器は装用開始後も、聞こえの状態や生活環境が変わるごとに調整を繰り返すため、適切な聞こえを維持できる点が大きな特徴です。
一方、集音器は微細な調整が可能な機能は備わっていないことから、購入後はご自身で音量を調整するといった対応しかできません。故障時の修理対応などは可能な場合があるものの、定期的なメンテナンスや調整は行われない点が補聴器とは異なります。
補聴器と集音器のどちらを選ぶか検討する際のポイント
補聴器と集音器のどちらを選ぶべきか迷った際には、何を基準に判断したらよいのでしょうか。検討する際のポイントを押さえておきましょう。
ポイント1:聞こえに対する不自由の度合い
まず目安になるのは、ご自身の聞こえに対して感じている不自由の度合いです。日常生活の中で聞こえに不自由を感じる場面がたびたびあるようなら、補聴器を検討したほうがよい可能性があります。一方、以前と比べるとテレビの音量をやや上げるようになったなど、限られた場面で少々聞こえにくさを感じる程度であれば、集音器で間に合う場合もあるでしょう。聴力のことで悩んでしまうようなら、聞こえにくさが進行している可能性があります。このような場合には、自己判断せず後述するように耳鼻咽喉科を受診するのが得策です。
ポイント2:装用する目的から決める
会議中に交わされる会話を聞き取りやすくしたいなど、装用する目的によっては補聴器のほうが適していることが想定されます。補聴器は単に周囲の音を増幅するのではなく、会話を聞きやすい音に整え、周囲の雑音は抑えるといった繊細な制御が可能です。集音器は周囲の雑音も一律に増幅することから、装用することでかえって会話が聞こえにくくなることもあり得ます。利用シーンや装用する目的によっては、微細な調整にも対応できる補聴器を選んだほうがよいでしょう。
ポイント3:判断に迷ったら耳鼻咽喉科を受診する
補聴器と集音器のどちらを選ぶべきか判断に迷った際には、耳鼻咽喉科を受診するのがベターです。聞こえの感じ方には個人差があり、さまざまな原因が考えられます。場合によっては何らかの病気が聴力に影響している可能性があることから、医師の判断を仰いだほうが安心です。診断の結果、補聴器の装用が適切と判断された際には、補聴器専門店に持参する診断書も作成してもらえます。判断に迷ったらご自身だけで悩まず、医師に相談してみましょう。
まとめ
補聴器は医療機器、集音器は音響機器という点からもわかる通り、両者はどちらも聞こえをサポートする機器ではあるものの、装用する目的や機能性は大きく異なります。補聴器と集音器を混同しないよう、違いを理解しておくことが大切です。今回紹介したポイントを、ぜひご自身の聞こえに適した選択に役立ててください。